朗読

本日「朗読座談会」@東京・青山

23時をかなり回ってから書き始めて、きっと打っているうちに日付が変わるだろうな、と思っていたらその通りになりました。今日はこの後寝て起きて東京に向かいます。
2021〜22年にかけてお世話になった、日本朗読文化協会が主催する「朗読座談会」に、一般の参加者のひとりとして加わることになりました。既に会場観覧も動画配信も申込みを締め切っているので、残念ながらこれからご案内をすることはできないのですが、参加する前に、私自身の思うところを書き残しておこうと思います。
「上手い朗読って、何?」というのが当イベントのパンチラインですが、ひとことで申せば
「そりゃいろいろでしょうよ」
になるかと思います。身も蓋もない話ですが。発声と言葉の調音に重点を置けばアナウンサー、ナレーターと呼ばれる方々が最も得意とするところでしょうし、劇的表現であれば、俳優声優、あるいは伝統的な音声芸術、文楽常磐津清元落語講談浪曲といったあたりを生業とされる先生方が自家薬籠とされるところでしょう。
そのどちらでもない、私はどうあるべきか、どうしたいか。
そういう自己規定のお話だと思うのです。
こう読むのがいい悪い、こんな読み手のここが上手・下手などという狭い了見の話ではなく、これまでの来し方と今後の私の歩もうとする方向をお話しできる機会であれは有り難いと思います。
また終わりましたら報告をいたします。

「朗読四都MONOがたり2023」終了

本番終わって、あれやこれや済ませていたら時間がかかってしまい、久しぶりの夜行高速バスで帰名して1日働いて寝て起きて、未明にこれを書き始めました。10日14日〜15日の、シブヤ大学での朗読ワークショップを含めた「朗読四都MONOがたり2023」、つつがなく終えることができました。ご来場の皆様、開催にご支援、ご協力をいただきました皆様、改めて深く御礼申し上げます。ありがとうございました。

各種SNSにも既に書いたり書こうとしていたりしますが、あまり目立たないこちらには、私が今作の制作に携わるに当たって、本当にお世話になった2人のことを記録しておきます。

前回に続き、ちらしのデザインをお願いしました、三重県津市の「橋本デザイン室」の橋本純司さん。出会ってからもう20年近く、宣伝美術をお願いする関係だけでも14,5年の中で、一貫して私の考えていることをビジュアルに落とし込んでいただける貴重な存在です。言葉が過ぎるかもしれませんが、一般的な朗読会のちらしは、会の大小を問わず、「中村仲蔵」の台詞にも出てくる「工夫が足りない」感を帯びたものが大多数です。つまりダサいものしかない。「朗読会拓使」から続く流れの中で、何としてもそれだけはしたくありませんでしたので、今回の反応は幸いなものとなりました。そんな橋本さんは今度、ご自身が戯曲と演出されるユニット「コケムスカヲリ」の上演があります。「中島さんを最近見ない」

http://kokemusukaori.com/stage/nakajimasan/

11月末は三重県伊勢市、12月16日には津市で開催される松原豊さんの写真展の関連企画としての上演、ぜひチェックしてみて下さい。私は伊勢の方に行くと思います。

https://gallery0369.jp/exhibition/2023matsubarayutaka-murakio/

そして、今回の告知記事を書いて下さった、東京新聞(中日新聞東京支社)社会部の小川慎一さんとも、もう10年以上のお付き合いとなりました。もともとTwitterでは繋がっていたところに、岐阜(支社)に赴任されることになり、そのころ通算50回そこそこだった「三十代の潜水生活」を取材していただきました。今回、10月5日付朝刊の都心版に掲載された記事を読みながら、その時のことをまた思い出しました。

https://www.tokyo-np.co.jp/article/281769

そういえば、東京に転勤で戻られるとき、柳ヶ瀬で最後に飲んだ店は、今年5月に開業10年を迎え、記念のイベント「演劇の日」にお邪魔した神室町商店Heatでした。やはり繋がるんですね、何ごとも。もちろん、それは分かっていたので、朗読の際に身につけたネクタイは、私を岐阜とつないでくれたきっかけとなった方、元・岐阜市文化センター副館長の故・本田秀勝さんの形見分けでいただいたものだということも申し添えておきます。

4者4様の朗読、いい意味でも悪い意味でもバラバラでまとまりがなくて、そもそも私を含め朗読家の特性として自分のことが最初に来る(笑)という関係上、まとめるのに苦労もありましたが、何とか終えることができると、やはりそれが喜びに変わったのは間違いないです。その意味で旅をしていたのは、お聴きいただいた客席の方々とともに、舞台上の私たちもだったかもしれません。

来年は名古屋らしいです。今から準備しないと、と思うとおちおち寝てもいられませんが。

15年目へ。

 

※Facebookからの一部転載を含みます※
本日(9月23日)は岐阜・柳ヶ瀬商店街のいしぐれ珈琲にて「朗読濃尾(ノーヴィ)」通算第155回でした。今回は、今日・明日と開催中の恐竜体感イベント「柳ヶ瀬ジュラシックアーケード」に協賛して、太宰治の「鴎(かもめ)」の朗読でした。思えば昨年も中谷宇吉郎先生の随筆を読みましたが。
じゃあなんで今回は太宰?と思われるでしょうね。そっちじゃなくて作品のタイトルに理由があります。

 

約6600万年前、巨大な隕石が落ちてきて生物の大量絶滅を引き起こしたときに、鳥類以外の恐竜はすべて地球上から絶滅した、というのが定説です。ただし、それには例外がありました。地上で生活していたと思われるいくつかの鳥の種は天変地異を凌ぎ、親類の恐竜たちが次々と死に絶えていくのを尻目に、あっという間に勢力を拡大していきました。
「窓辺でさえずっているかわいらしい小鳥たちは、この地球上に現存している唯一の恐竜たちです」と述べる研究者の存在を、↓のサイトで知りました。

 

そうか鳥は恐竜なのか!じゃあそのあたりで作品探すか……と決めてはみたものの、結局は手近な太宰作品にしたのは、「私は唖(おし)の鴎だ」と自身を規定しながら、それでもどうにか生き抜こうとしていた、1940年の太宰を、私自身と重ね合わせたように思います。

 

そして、今回をもって、2009(平成21)年夏にスタート以来満14年を迎えることができました。休みなく来ていれば、単純に168回になったはずですが、この間新型コロナの影響だけでなく、災害だったりトラブルだったりで何回か抜けているための155回で、来月からは15年目に入ります。思わず指折り数えました。
ここまで来られたのは勿論、これまでお送りした配信を聞いて下さった方、移転前も移転後の店にお越しいただいた方、そしていうまでもなくプロデューサーの石博さん、今回も立ち会って下さったぽちさんはじめ、岐阜のみなさん、柳ケ瀬商店街の皆さんのお力添えあってのことであり、それなしでは続くことはありませんでした。改めて深く御礼を申し上げたいです。
本当にありがとうございました。
そしてこれからもどうぞよろしくお願いいたします!

 

柳ヶ瀬も大きく変わりつつあります。
かつての店跡地にはグラッスル35が建ち、今はキッチンフクイ2ndがあるあたりが、高島屋南商店街のメインストリートでした。高層マンションが複数林立したことに続き、いよいよ日ノ出町の中心部に残る長崎屋の旧店舗が撤去され、公園的な?広場の造成が始まるとのこと。どんな風景になるんでしょうね。いずれにせよ、未来に向かって進む柳ヶ瀬にひとりの読み手として関わりたいという気持ちにいささかも変わりありませんし、その心境は年月を重ねるうち徐々に明確になってきたように感じます。

 

その意味でも、私は柳ヶ瀬に育てられたのだな、とも考えながら、夜の街並みをパシャパシャ撮りながら帰ってきました。次回は10月28日(土曜日)です。配信はうまく行かなかったので、ちゃんと編集したものを急いでお見せできるようにします。また、リアルでもご来店をお待ちしております。
暑すぎる夏から秋へ、ようやく疲れも抜けて動き出せそうです、と書いているうちに日付が変わり、年齢をひとつ重ねました。48歳、年男のニシムラもどうぞよろしくお願い申し上げます。

準備と屈伸—「朗読バトルゲーム」終了

週の真ん中の祝日、ようやく落ち着いて振り返ります。
もう先週、2月16日(木)は、「朗読バトルゲーム」の5thシーズン決勝大会に出てきました。まだアーカイブがご覧になれますので、有料ですがよろしければどうぞ。私を含め、6名が出ています。

https://twitcasting.tv/voicevoice0701/shopcart/214609

優勝は佳穂さん、準優勝は土屋佐知子さんでした。おめでとうございました。私は選外でした。主催者から「順位が知りたい場合は個別にお問い合わせを」というアナウンスがありましたが、遠慮しておきました。

前にも記したような気がしますが、行きがかり上参加していた「競技朗読」からはこれで引退です。個別個別の場でいただいた栄誉は栄誉として、これからは新たな作品の「発掘」に力を注いでいきます。

これは昨年受講した「朗読指導者養成講座」で立てた方針の通りです。

とはいえ、誰かと「読むこと」を競うのは芸を磨く上で絶対とは言わずとも、とても重要な過程だと思いますし、初心者の方も意思がおありであればどんどん挑戦されるべきです。自分も高校時代の放送コンテストを皮切りに、青空文庫、跡見、文化協会と何回となく受けたり出たりもし、褒められたり少ないながらも貶されたり、そもそも落ちたり(これは多数)を繰り返し、その度、さまざまな方と現在まで続く得難い関係が結ばれました。

ただそれらはいずれも、他人の評価に自らをさらすという意味の行為であり、それを原動力として自らの読みを進めるという側面が、徐々に強くなってきた気がしました。

そうではなくて、内在する自らの熱をもっと煽って煽って、ちょうど昨夜大須演芸場で「扇橋報告」という、入船亭扇橋+ゲストに春風亭一之輔という豪華な顔付けの会を聴いたのですが、ちょうど「うどん屋」で一之輔師が語るうどん屋が扇で炭火を奮い立たせるような、そのイメージ。自分で自分の機嫌と調子を取っていきたいと思います。

「そこ」で勝とうが負けようが、重要なのは「その後」であり、朗読してる限りは準備と屈伸が続くのですから、と一丁前なことを申し上げておきます。

上のアーカイブで読んだ「どんぐり」、早速自分のツイキャスでも読みました。
下のリンクの2分50秒あたりから22分手前までです。バトルゲームでは15分という制限がありましたのでスピード重視で読み切りましたが、そこから5分延びるとここまで変わるものなのだな、と自分でも驚きました。こちらもどうぞご贔屓に。

https://twitcasting.tv/afrowagen/movie/759623656

さて、次は明後日、25日の柳ヶ瀬です。仕込みは今夜からです!

あたらしい螺旋へ―2022年末

新年あけましておめでとうございます。いま、午前2時を少し過ぎた一宮市の実家の居間でこれを打っています。旧年中は多くの方に大変お世話になりました。今年も何卒よろしくお願い申し上げます。

昨年の今頃、何を書き残していたかしら、と思い読み返してみれば、何のことはない、これから書こうとしていることと大きくは違わなかった点と、この段階があったから今、こういうところに来たのだな、と納得できる点の両方がありました。

9月、役者を引退します、と申し上げました。

それ以来、とても身体が軽くなったような気がします。もちろん、物理的には大して違いはなく、あくまで気の持ちようで、ということですが、普段言葉を使った表現をしている人のくせして、実際に口から出すことの効果を見誤っていました。
この調子でいこうと思います。そして、より深く。

何を?かといえば

・「濃尾」→愛知を、岐阜をより広く、深く。さまざまな作品の発掘を通じて

朗読者としてはまずこれを、ライブの朗読とYoutubeを一層活用して進めます。「岐阜のつたえ話」もちろん、読み手としていろいろなところへ旅をしてみたい。

そして、公演制作の方面では

「交流」→実際の上演だけでなく、多様な形の知識と技術の交流を図る

ここは一応、2015年にワークショップデザイナー(地域教育育成専門員)の資格はいただいていますので、その腕が錆びつかないよう、愛知・名古屋地域に新しい風が吹くような企画を組みます。すでに動き始めているものもあります。そこは特に声と身体、演劇的スキルに関するものを中心とした取扱いになると思います。ご期待ください。

まずはさっそくこの3が日のうちに1本アップします!しますとも!

《2022年の記録》
※柳ケ瀬「朗読濃尾(ノーヴィ)」
その139 1月8日(土曜日)
その140 4月9日(土曜日)
その141 5月14日(土曜日)
その142 6月11日(土曜日)
その143 7月9日(土曜日)配信のみ
その144 9月24日(土曜日)
その145 10月22日(土曜日)
その146 11月23日(祝日)
その147 12月24日(土曜日)

※2,3,8月は中止

※刈谷市広小路「ディマージュの庭」
その15 1月15日(土曜日)
その16 2月19日(土曜日)
その17 3月19日(土曜日)
その18 4月30日(土曜日)
その19 5月21日(土曜日)
その20 6月18日(土曜日)
その21 7月16日(土曜日)
その22 8月20日(土曜日)
その23 9月10日(土曜日)
その24 10月15日(土曜日)
その25 11月12日(土曜日)
その26 12月22日(水曜日)

6月11日~12日 順風男女公演「おてんこうてんおてんてん」
(於・長久手市文化の家光のホール)
9月11日 劇団シアターホリック「夜明け前≒LostGeneration」(於・G/PIT)
10月9日 朗読四都MONOがたり
(於・ホテルウイングインターナショナル渋谷)

「朗読四都MONOがたり」終了

話が持ち上がって9か月、本格的な準備からたぶん半年を経て、昨日「朗読四都MONOがたり」が終わりました。ご来場の皆様、当日運営をお手伝いいただいた皆様、気にかけていただいた皆様、誠にありがとうございました。
遠く離れた場所から集った者たちで1本の朗読会を企画するというのは、もちろん個人的に初めての体験であり、ペース配分や仕事量に戸惑ったことも多くありましたが、何とか大過なく終えられたように思います。
今回の会の「4人が自分で選んだ作品を持ち寄って読む。しかもそれぞれの土地縛り」というコンセプトは、これまで私が3回にわたって企画した「朗読会拓使」に基づいていたことに、終わって改めて気づかされました。「2つの街で、2人の読み手が、1つの作品をそれぞれ連れてきたミュージシャンとともにセッションする」ことと比べて、より地域への視線を強め、それぞれの作品をひとり(単独=モノ=MONO)で語れば、1本筋は通るのではないか、と。
間に前尾津也子さんから提案のあった4人での朗読を挟むこと、そしてオヤビン佐藤さんの蓄音機の演奏により、コントラストが一層明確になりました。そのような意見交換、アイディアのすり合わせの下で進められたのも幸せなことでした。
何に、どこに基礎をおいて朗読をしていくか?
昨年からの指導者養成講座と今回で、もしかしてこれじゃないか、というものが見えたような、そうでないような…。断言は避けますが、少なくとも深める方角については認識できたように思えます。あとはこれをどれだけ繰り返せるか。時間は有効に使っていきたいと思います。
私の分の朗読、小酒井不木の「変な恋」については、準備ができ次第Youtubeにアップしたいと思います。お楽しみになさってください。
前尾さん、今日も普通に司会の現場だった富田欽一さん、ちゃんと札幌に帰ったのか聞いてない(笑)髙橋貴美さん、そして最初から最後まで颯爽としていたオヤビン佐藤さん、本当にありがとうございました!
さて、また明日からは一歩ずつ。
今週土曜日、10月15日はまた「ディマージュの庭」です。

ここからひろがる—「ディマージュの庭」第23回

シアターホリック名古屋公演のあった週は、偶然私のいつもの朗読と重なりました。本来ならば月の第3週に行われる刈谷市のギャラリー「ギャルリ・ディマージュ」での「ディマージュの庭」が、1週繰り上がったためです。そして、その繰り上がりの理由が、個人的にはグッとくるものでありました。

2020年の秋、まだ移転前の、JR刈谷駅近くにあったディマージュで始まったこの企画は、毎回ひとりの詩人を取り上げ、その人となりを私が毎回取材して話したり、たまには作品を読んだりという1時間の内容で、これまで22回繰り返してきました。

そのことを当日報でもなかなか書かなかったのは、ありていに申し上げて、今も現役で活躍されている方、また鬼籍に入った後も著作権保護期間が続いていて、その許諾に一定の時間を要してしまう方の作品群に触れることもあり、そこがクリアされない方の作品を読みます・読みました、と申し上げる訳にはいかなかったという事情でした。なので、これまでSNSで公開したもの以外については今後もお知らせはしないつもりです。何卒ご了承下さい。

そういうディマージュの庭の中でも、ここまで通して行ってきたのは、ギャルリ・ディマージュのオーナー、角谷さんの夫君、清和さんがずっと書いてこられた詩を1本読むということでした。その本数がたまってきたこの秋、清和さんの詩と、陶芸の徳竹秀実さんとの2人展「詩と土の歌」が行われることになったから、このタイミングで読んでくれないか、というお誘いをいただきました。

本当、ささやかなものでしかないかもしれない。でも続けてきて良かったな、と思えました。私の朗読が、私のあずかり知らないところで拡がって伝わる、その最もわかりやすい例が生まれたわけですから。

その一部をご覧に入れます。

「景色が海へと」という詩を読んだあたりです。完全版は編集した上、来週の今ごろにはアップしたいと思います。よろしくお願いいたします。

トップの写真は清和さんと徳竹さんに挟まれた私。お世話になりました。

次回は10月15日です。刈谷市の方、ほかお近くの方、ぜひ1度ディマージュにお越し下さい。お待ちしています。

今日までそして明日からー養成講座修了

先月末の予告に反し、いきなり総括を書いてしまいました。個別のメモは後から追加してゆくとして、最初にこれまで、自分の目からときどき見えてきた風景を書き残しておきます。

何回読んでも、何本上げても、それらが誰に届いているか感じられない。リアルでやっても、客は集まらないし、そもそも知られているのかも、そして存在を認識してくれている人が果たしているのかどうか、それも分からない。もとより名古屋では、私の朗読に関心を払ってくれる人は大していないけれど、最近その傾向がとみに強くなっていないか……。

以上、もちろん、ここまで書いたことを常に思っていて鬱々としているというわけではなく、体調が悪かったり睡眠が足りなかったり、これまで何らか心身の状態にアンバランスさを持っている時に比較的出やすい、愚痴というか繰り言みたいなものですが、そういうことを抱く時間が、ここのところ増加傾向にあったのも事実だったのです。それが、先月の「隣の芝は光ってみえる2022」というエントリにもつながったのでしょう。たぶん。

曲がりなりにも続けることで保ってきた自らの「軸」みたいなもの。他との比較を意識するあまり、それがグラグラしていたのも、ここ数ヶ月というところ、つまり今日まで受講してきた日本朗読文化協会の「朗読指導者養成講座」と重なる期間でもあったのでした。

で、ようやく本題、そしていきなりの結論です。
この12回の講義は、弱っていた私の朗読の基礎杭の部分に、新たにセメントを流し込むかの如く、確固とした養分を流し込んでくれました。基礎編としてボイスの山崎広子、日本語の構造の考察で野田尚史の両先生、実践編としてNHK関係から渡辺考さんからはドキュメンタリストとしての対象の見つめ方、吉川精一アナウンサーからは番組の司会経験からのレトリックを、そして中西和久さんからは実際の講談台本を用いた台詞回しと抑揚、緩急を。バラバラに見えてそれぞれ朗読表現の根幹を形作るアプローチの方向、考え方の方角を与えてくださったと感じています。

基礎編の最初、そして表現編の最後の2回は回の名誉会長、加賀美幸子さんの講義でした。振り返れば、第1回と今日(8/27)、言われていることに大した違いはたぶんありません。だけど、聞く私、おそらく他の方もそうだったと思うのですが、聞こえ方が違い、分からなかった意味や意図が少しは分かるようになっている。そんな気がするのです。

写真にもありますが、ちょうど今週会場から見える東京タワーを覆うように建設が進む高層ビル(麻布台プロジェクトというらしいです)が、徐々に鉄塔の高さと肩を並べるように、私たちは少しは学んだし進化した。そう信じたいです。

・指導は精神論でなく具体論で
・教えるのも学ぶのも人間力(良識をもって勤勉であること)
・素材をとことん研究し取材すること
・古典に学び、取材を

最後の講義でも触れられたその4つに加えて、「あなたにとって朗読とは?」と問われた答えを並べるならば、

・知られていない、埋もれている作品を「発掘すること」
・技術の向上と継続した活動でそれらを「伝えていくこと」
・育成とその手法の研鑽を通じ「つないでいくこと」
・自らのアンソロジー(選集)を「編み続けること」

の4つを挙げて発表し、私に与えられた時間の締めくくりとしました。

最後に読んだ辰濃和男の随筆と山之口獏の詩、どちらもこれから手がける重要なテキストになりそうです。講座はこれで終わりましたが、日付が変わり今日からまた始まります。タイトルはそういう意味であり、一見変わらない日々であっても、私自身の朗読を変えてゆく、その小さな変化を積み重ねて行きたいと思います。

もう前エントリみたいに「隣の芝が青い」ことに惑ったり慌てたりせず、自分の軸を常に見つめてゆく2022年夏以降でありたい、と思います。

協会の皆様、講師の皆様、そして受講生としてご一緒した皆様、本当にありがとうございました。今後ともよろしくお願い申し上げます。

隣の芝は光ってみえる2022

ほんと、表題の通り、他人や自分が関わらない公演やプロジェクトの多くが、普段感じる以上に盛り上がり、それが羨ましくみえて仕方がなかった何ヶ月間かを過ごしていた気がします。それはそのまま、SNSの見過ぎであった時間の連続でもあったのだな、とも思います。いや、きっとそうだ。
どこがとはいいませんけれどもね、何とかスラムジャパンとか。
私はこれまで参加したことはありませんが、心情的には応援してきましたし、それは今も変わっていないつもりです。ただ、そこに含まれる多くの要素の中に、私自身がこれまでやってきたことを否定される傾向が見いだされるようになったことが残念でならない、とも感じている者でもあります。

 

何が「お前のやっていることと一緒にするな」だよ、ということです。すべての組織、サークル的なものが持つ宿痾というものから逃れられなかったということなのか。仲のいい方もいないではないので、今までは遠慮していましたが、いつまでも曖昧にしていけない気がするので、踏ん切りをつけてしまうことにしました。

 

そういう風に煽られてしまえば、悲しいことですがこちらもこう応じざるをえない。

 

「あそこで垂れ流されている朗読と呼ばれるものだけが朗読じゃない」と。

 

ということを差し引いても、何してんの?というものも一定含まれている場所を、ばっくりとした見方でしか観れず、語れなくなっていたのは、きっと寒すぎたし、間をおかず暑くなりすぎたからだ、ということのも大きいのだと思います。

徐々にコロナ禍の中から日常の活動を取り戻そうという動きが出てきて、それになかなか追いつく環境が整わない当方と比べて焦りを感じていましたが、ようやくそういう自分もお知らせができます。

約5年ぶりに、東京で朗読します。
昨年の秋から月1回、(特非)日本朗読文化協会(https://rodoku.org/)に会員としてお世話になり、朗読指導者養成講座の末席に加えさせていただきました。まもなく終了する講座の締めくくりのような日程であるのは決して偶然でなく、これまでとこれからの節目になるような大切な時間になるような気がしますし、そう聴く皆さんに感じていただけるような時間をお届けするつもりです。
若き江戸川乱歩が私淑し慕った、愛知県蟹江町出身の医師であり探偵小説家「小酒井不木(こさかい・ふぼく)」。その中でも珍しく笑劇(ファルス)の要素が濃い短編「変な恋」を持って行きます。その他、ご一緒する皆さんそれぞれが、自らのルーツとなる土地にまつわる作品を持ち寄ってお送りする「朗読四都MONOがたり(よんとものがたり)」、ぜひご来場いただければと思います。

 

お待ちしております!

講座の総括をすこしずつまとめながら、今月末のお知らせを当欄でしてゆきます。SNS上だと、書きずらい部分もありますし、いや、別にいつも刺激的なことを書くばかりではないんですよ!

【順延】久しぶりの、東京での朗読です

俯くのではなく足下(2021年末)

2021年が終わります。前回の本「活動日報」から1年以上経ってしまいました
ので唐突な感じはありますが、TwitterとFacebookは更新を続けておりますので、そちらをご覧いただければ幸いです。一部、そちらで残して置いた記録を転載しておきます。

何もしなかったわけではない。だけど何もできなかった、

という感触にとらわれているここ数日です。

中止と配信のみが続きながらも、岐阜・柳ヶ瀬と刈谷での朗読は今年も続けることはできました。柳ヶ瀬は139回、1年を迎えた刈谷も2回の中止はありましたが10回を重ねることができました。久しぶりにとよたミュージックケアの会の皆様とも3年ぶりにご一緒することができました。

そして何より、こんな状況の中ですが(特非)日本朗読文化協会の「朗読指導者養成講座」にも加えていただき、来年夏、8月まで東京で学ぶことのできる機会を得ました。

https://rodoku.org/%e5%8d%94%e4%bc%9a%e8%a8%ad%e7%ab%8b20%e5%91%a8%e5%b9%b4%e8%a8%98%e5%bf%b5%e4%ba%8b%e6%a5%ad%e3%80%8c%e6%9c%97%e8%aa%ad%e6%8c%87%e5%b0%8e%e8%80%85%e9%a4%8a%e6%88%90%e8%ac%9b%e5%ba%a7%e3%80%8d%e5%8f%97/

やっているじゃないか、頑張っているじゃないかと声をかけて下さる方もみえました。それにも関わらず上のように感じるのは、どこか「流された」感じがするのです。誰かに、何かに、どこかに。種類は様々ありましょうが、そう自分が感じたことを大切にしたい。幸い、原因は分かっているので。

隣の芝生を青いとうらやんだり僻んだり
ひるがえって自分は何もできないと落ち込んだり
そんなことに時間と体力を使うより
ひたすら自分の足下を見つめ、掘り下げることに専心したい

そんなことを思っていた年末に、背中を押される2つの言葉に出会いました。
まず、今年「東京の生活史」を上梓された立命館大学の岸政彦先生が紹介されていた、「沖縄学の父」伊波普猷(いは・ふゆう)の言葉です。

「汝の立つところを深く掘れ 其処(そこ)には泉あり」

そしてつい昨夜、元・ヤクルトスワローズの投手で現在はブラジル料理店を経営する片山文男さんが、高校球児であった時に監督にいわれた言葉、

「基本をまずしっかりすること。一瞬のチャンスが絶対に来る。努力をしていれば不思議なことが起きるんですよ。野球があったからこそそれを覚えたんです」

https://full-count.jp/2021/11/30/post1156926/

2つを繰り返し心に刻みつけつつ、年を越そうと思います。
皆様、よいお年をお迎えください。

−2021年の記録−

・『朗読濃尾』(於・岐阜柳ヶ瀬「いしぐれ珈琲」)
その132 1/30 配信のみ
2/27 中止
その133 3/27
4/24 中止
5/29 中止
その134 6/26
その135 7/31
8/28 中止
9/25 中止
その136 10/9
その137 11/13
をの138 12/11

・『ディマ−ジュの庭』(於・刈谷市広小路「ギャルリ・ディマージュ」)
その4 1/29
その5 2/20
その6 3/20
その7 4/17
その8 5/15
その9 6/19
その10 7/24with水野修平氏(pf)
その11 8/14
その12 10/16
その13 11/20
※9月、12月は中止

・とよたミュージックケアの会「おしゃべりコンサート」12月18日
(とよた市民活動センターホール)