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納得ー「青空文庫朗読コンテスト⑪」

「今回、獲る気、なかったでしょ?」
終わった後にそのように尋ねられて、あっ、そうそう、確かにそうだった、と思ったのです。

昨年は第2位にあたる銀賞をいただいた「青空文庫朗読コンテスト」に今年も参加して、851名(確か)の予選参加者の中から30名の中に残していただき、昨日、その本選のために大阪に行ってきました。

4つの課題作の中から1つを選んで録音予選/対面予選に参加し、その中からの選抜という流れを経るのですが、今回の私は、江戸川乱歩の「D坂の殺人事件」の抜粋部分を選びました。実はその録音予選の素材を収録したの、札幌でのバカンス中(笑)だったのです。いつもの逗留先のゲストハウスの共有スペースで、パッと録ってサッと送ったのは、その後の「朗読会拓使」の製作期間のスケジュールを考えると最後のタイミングでした。

それでここまで行けたんだから良しとしなければならないのかも、という気持ちと、入賞できなかったから出てないとも同じだなこれ、という気持ちがない交ぜになったまま、ひと晩寝て起きて、午前6時前にこれを書いているところです。

でも、と思います。
今年の進行具合で、今回のようなテキスト解釈で、一昨日のエントリで残したように「書かれた文字を、そのまま読む」ことは、想像した程度に概ねはできました。結果的には声色の表現が混じりましたが、それは「ああいう」風にしか明智小五郎を読めなかった結果です。とてもじゃないけれど、シュッとしたイケメンでイケボで頭脳明晰明朗快活、そんな非の打ち所の全くない人だとは思えなくて。

あ、そうそう。これも終わった後に他の出場者の方に言われたことですが「あんなに『動かしてくる』とは思わなかった」とも。

種を明かせば、「視線や声のベクトルに揺れを作っていたのは明智と「私」が事件現場となった本屋と、道路一本隔てたカフェの、多分テーブル向かい合わせではなくカウンターだろう、そこで、ウエイターなりバーテンの肩越しに、お互いが何を見て何を考えているのかを察しあい感知しあい、店の他の客にもある程度は遠慮しつつ居ようとする2人をどう読んで表現するか、」

という個人的なテーマに即したものだったので、「え?逆に何であそこまで動かないんだろ…?」と思ったのです。それが評価されないのはピンからキリまで私の責任ですし、そういう繊細さをいかに伝えられるようになるか、が私の今後の課題なのだとも言えます。そういう意味で今回審査に当たってくださった審査員の皆様にも深く御礼を申し上げます。

さて、今夜改めてお知らせしますが、来月は再び北海道にうかがいます!12月28日、仕事を早く納めて来ていただけませんか?というお願いです。どうぞよろしくお願いいたします。

ただ、対象だけを(追記済)

ざわつく感情がある。いらつく言葉がある。あからさまな表情がある。そういう時の自分が何をできていないのかといえば、対象を見つめること、くみ取ることだということに気がついたのは、決して昔のことではないように思います。私の場合、それも朗読の最中でした。

少しでも集中を欠けば、それはもう分かりやすい。途端に読めなくなります。予想もしないところでトチります、詰まります。信じがたい状況のまま、持ち時間は終わりに近づきます。幸い、そこまでの惨事に至ったことはありませんが、それと紙一重という瞬間、ヒヤリハットは数知れず、です。

今年もそんな瞬間を永遠のもののように感じる場に立つため、大阪に向かっています。「第11回 青空文庫朗読コンテスト」への出場に備えて、です。昨年と全く同じルーティーンをこなして、明日の本番に備えようと思います。

その出だし、新幹線に乗る前に観てきた、キクマサプロジェクトの「ダダダン寺田屋ァ!!」。昨年は終わった後に報告に行った盟友にして名優・中村宙矢に「獲ろうと思うな。誰かにくれてやる位の気持ちでいろ」と言われ、ああこれも、何を対象にするか、ということなのだなと。

キクプロ、まだまだ良くなりますよ。ぜひ若い役者の皆さん、中村に食らいついていってほしいと思います。何かすれば、それなりのものを返してくれる、いい役者です。演技も、ハートも。

私はただ、対象だけを。ただ書かれてあることだけを読みに行ってきます。また現地から報告します。写真はありませんがその時追加で。

《追記》写真追加しました。望んだ結果ではありませんでしたが、エントリを改めて書きたいと思います。